アドレナリンが出て、目が冴えて、なかなか眠れない!
この記事ではそんな方のために、質のよい睡眠をとるための方法をお伝えしていきます。
まずは、最終的な要点だけお話しします。
夜、ぐっすり眠るためには・・
さまざまな方法で、身体を「副交感神経優位」の状態にするのが重要です。
副交感神経とは?
まず、自律神経という、脳や内臓の、興奮とリラックスを司る神経があります。
「交感神経」と「副交感神経」は、それぞれ自律神経を構成する成分で、交感神経は主に興奮を、副交感神経は主にリラックスを司っています。
書籍「病気がみえる vol.07 脳・神経」より引用
交感神経と副交感神経は、いっぽうが緊張するともう片方がゆるむような関係を持つのですが、
睡眠時には、これらのうち副交感神経が優位になり、身体がじゅうぶんにリラックスした状態になることが必要です。
逆に、さまざまな要因によって交感神経が優位となった続くと、リラックスすることができず、眠れない、ということになるのです。
睡眠にはいろいろな要素がかかわっており、さまざまな考え方、さまざまな眠るためのメソッドがあるのですが、
最終的には、寝る前や寝ているあいだ、ご自身の「副交感神経を優位にする」ことを達成できれば、ちゃんと眠れる可能性は高くなります。
それでは、何をすれば、副交感神経を優位にすることができるのでしょうか。
この、具体的な方法については個人差が大きく、
「これをすれば副交感神経を優位にできる!」という、いわば万能メソッドと言えるものはなかなかありません。
例としては、ある人にとっては心身をリラックスさせ、副交感神経優位に導いてくれる音楽が、
ある人にとっては交感神経を刺激し、興奮を促してしまう、ということがあります。
そのためリラックスための方法は、ご自身にて試行錯誤し、「ご自身に合う睡眠メソッド」を見つけるしか無い、というのが実情です。
しかし逆に言えば、あなた自身が、あなた自身の副交感神経を優位にすることができるメソッドを確立すれば、
少なくともあなた自身に関しては、夜、ぐっすりと眠れるようになる、と考えます。
以下では、筆者自身が重要だと思うメソッドを紹介させていただきますので、
お示しいたしました方法をヒントに、いろいろと試していただき、
ぜひ「ご自身に合う睡眠メソッド」を身につけていただければ、と思います。
目次
「寝るときの姿勢」を整える
まず、睡眠時の姿勢です。
睡眠時の姿勢において、もっとも重要なのが「首の姿勢」であり、
首の姿勢を崩してしまう、もっとも気をつけるべきことは「高すぎる枕」です。
人間の首の骨、つまり頸椎は、下の画像のようにゆるやかに「前弯」するのが正しい状態であり、もっとも負担の少ない状態です。
Windows用アプリケーション「ヒューマン・アナトミー・アトラス」より引用
枕があまりにも高いと、頸椎の正しい前弯ができなくなり、ストレートネックの状態になってしまいます。
ちょうど、立った状態でスマートフォンを見下げたような状態ですね。
このような状態が何時間も続くと、頭板状筋などといった首の後の筋肉が引き伸ばされ続けて、負担がかかり続けます。
逆に枕があまりにも低いと、あごが完全に挙がってしまい、首の前が引き伸ばされ続けて負担がかかってしまう場合があります。
脳に、間脳の視床下部という場所があり、この場所がおもに自律神経のコントロールを行っているのですが、
首が正しい姿勢からはずれた状態が続くと、こういった自律神経をコントロールする場所への血流が悪くなり、
副交感神経優位の状態になりにくくなると考えられます。
そのため、質のよい睡眠のためには、正しい頸椎アーチを保つように、枕の位置や高さを調整しましょう。
また、人間は寝返りをするため、横になった状態の首も重要です。
Windows用アプリケーション「ヒューマン・アナトミー・アトラス」より引用
横になった状態だと、上の画像のように、首が正中線上にあるのが正しい状態なのですが、
枕が高すぎると天井側に、枕が低すぎるとふとん側に首が傾いた状態が続いてしまい、
この状態が続いたとしても、首に負担がかかってしまいます。
以上をまとめますと、
「あおむけの状態で正しい頸椎アーチが作られ、横向きで頭がからだの正中線上にくる」枕が、よい枕の条件になってくると思います。
そのための枕の高さを何cm、と一概に決めるのは難しく、枕の素材や硬さによっても変わってくるところですので、
最終的には、ご自身の環境で試行錯誤をしていただくしか無いのですが、
症状の面から考えると、寝た状態で首の後ろを押さえて、筋肉が強くこり固まっている場合や、
鼻の奥での呼吸がしにくく自然に口呼吸になってしまう場合には、枕が合っていない可能性があります。
枕以外にも、ベッドのやわらかさなど気にするべきところはあるのですが、
まずは正しい頸椎の状態をつくるように枕を整えるところから、始めていただければ、と思います。
「ゆっくりとした鼻呼吸」が有効
睡眠姿勢だけでなく、睡眠時の呼吸が重要です。
自律神経は内臓機能をコントロールする神経でもあり、体温、心拍数、呼吸数、血圧、腸の運動などをコントロールしています。
このうち心拍数や血圧は、自分の意志で自由にコントロールすることはできないパラメーターですが、呼吸数は唯一、自分自身で自由にコントロールすることができます。
交感神経が緊張状態になっているときは、呼吸は早く、浅くなる傾向があります。
そして深い呼吸を繰り返すことにより、自律神経を副交感神経優位の状態に変えることができる場合があるのです。
副交感神経を優位にするため、長く、深い鼻呼吸を繰り返しましょう。
吸うときは、5秒間かけて鼻の奥でゆっくりと吸い、吐くときは同じくらいの時間をかけて、すぼめた口からふーっと吐くのが基本です。
5秒間かけて鼻の奥で吸い、5秒間かけて吐く、をなんども繰り返しましょう。
鼻呼吸を定着させるために、寝るときに口テープを貼る方法もあります。
有効な方法なのですが、通気性が無いテープを使ってしまうと息苦しくなってしまうことがありますし、また肌に優しくないテープを使うとかぶれてしまったりしますので、
薬局に売っている「サージカルテープ」など、通気性があり肌アレルギーを起こしにくい製品を選んで、使われることをおすすめします。
日常生活においても、深呼吸の習慣はとても重要なのですが、
深呼吸は寝る前にこそ大きな効果が見込めますので、ぜひお試しいただければ、と思います。
日中の「適度な運動」
夜、副交感神経を優位にするためには、
交感神経が活性化するべき日中に、じゅうぶんに活動し、正しく交感神経を活性化させてあげることも重要です。
なかなか眠れない日が続く場合や日中にぼーっとしてしまう場合、交感神経がじゅうぶん活性化するべき時間帯に、副交感神経優位の状態が抜けていない場合があります。
特に、適度な運動は有効です。
どのような運動をされるかは、運動経験や好みによるとは思うのですが、
ランニングやウォーキングは、日光を浴びながら行うことができ、
適度な負荷があり交感神経をじゅうぶんに活性化させ、セロトニンなどのホルモン分泌によってもその日の睡眠を助けてくれるといわれていますので、
よい選択肢なのではないかと思います。
注意点としまして、ランニングは、フォーム、つまり走る姿勢がじゅうぶんに整っていない場合、
また運動習慣があまり無かった場合などには、膝などにダメージを与えてしまうことがありますので、
まずはゆっくりとしたウォーキングから始め、少しずつ身体を慣らしていくのがよいと思います。
寝るまえに浴びる「ブルーライト」を減らす
自律神経には、主にパソコンやスマートフォンなどから出る、ブルーライトも関連しているといわれています。
ブルーライトは、青い空からも照射されているような一般的なものなのですが、
パソコンやスマートフォンなどのLEDディスプレイからも多く出ています。
日中これを浴びることは、睡眠の観点からは特に問題ないのですが、
夜、寝る前に多くのブルーライトを浴びると自律神経に影響を与え、眠くなるべきタイミングで覚醒を促してしまうことがわかっています。
そのためパソコンやスマートフォンの使用は、寝る前には控えるべきです。
そうは言っても、仕事の締切が近いなど、機器を使わざるを得ない場合は多いと思います。
その場合は、スマートフォンやパソコンの、ブルーライトカットモードを使いましょう。
画像はそれぞれiPhoneの画面で、右がブルーライトカットモードをオンにした状態です。
明らかに青みが減っているのがお分かりになるかと思いますが、この状態だと画面から照射されるブルーライトが減っていますので、影響を抑えることができます。
「iPhone ブルーライトカット」「Windows ブルーライトカット」などで検索すれば、設定方法は調べることができると思います。
(OSのアップデートなどにより方法は変わってくると思いますので、具体的な設定方法はここでは割愛いたします)
ブルーライトカット機能を備えた、眼鏡や液晶保護フィルムや使用するのもよいでしょう。
いま、このブログを読まれているのが夜だとしたら、ひとまずいま使われているデバイスを、ブルーライトカットモードに設定してみることをおすすめします。
また、ディスプレイ自体の明るさを暗く設定するのも有効です。光の量そのものが減るので、照射されるブルーライトの量も減らすことができます。
逆に、ちゃんと起きるべき朝にブルーライトを浴びるのは有効です。
朝はカーテンを開けたり外に出たりして、しっかりと日光を浴び、交感神経を働かせましょう。
リラックスできる「音楽」や「飲み物」を活用する
寝る前にお気に入りの音楽を聞かれたり、心を落ち着かせる飲み物を飲まれる、という方は多いのではないかと思います。
これらの方法の効果は、実践される方によって相性のよい悪いが大きいのですが、
ご自身がリラックスできるものを見つけることができれば、とても良い方法になり得ます。
ぜひご自身に合った、リラックスのための方法を探してみましょう。
ちなみに筆者は、最近は以下のアプリケーションの音を聞くとよく眠ることができるため、常用しています。
波の音や雨音など、自然音を中心としたリラックスできる音声を流してくれるアプリです。
注意点として、飲み物はカフェインを含まないものにしましょう。
またお酒は、少量であれば眠るために有効な場合もありますが、すくなくとも大量の飲酒は睡眠に悪影響を与えていく、ということがわかっています。
ときどき少量を飲まれるのは問題ないでしょうが、眠るために毎日飲まれたり、大量に飲まれたりするのは控えるほうがよいと思います。
「薬剤」は、あくまで最後の手段
睡眠薬についてです。
睡眠薬にはさまざまな種類があるのですが、一般的にクリニックの外来などでは、
「超短時間型」「短時間型」といった作用時間が短く、すぐに寝つくためのものがよく処方されます。
(具体的には「マイスリー」「レンドルミン」などがよく処方されます)
これらの薬は多くの場合において、短時間でとても高い効果を発揮し、飲むとすぐに眠れる場合も多いのですが、
その効果を気に入って長期間内服し続けたり、処方量よりも多く飲んでしまわれたりすると、
徐々に「耐性」ができてしまい、大量に薬を飲まないと眠れない状態になっていく場合があります。
そのため、習慣的に飲み続けることはせず、普段はこれまでにお伝えしたような薬剤以外で自律神経を整える方法を使い、
睡眠薬は、翌日に重要なイベントがあるがどうしても眠れないとき、などにのみ使う「最後の手段」とするべきだと思います。
まとめ
夜、ぐっすりと眠るためには、自律神経のうち副交感神経を優位にし、じゅうぶんにリラックスすることが必要です。
具体的に副交感神経を優位にする方法、というところは相性によって大きく変わってきてしまうため、
これをやればOKという「万能メソッド」が残念ながら無く、ご自身にて合った方法を探していただくしか無い、というのが実情だと思います。
本記事におきましては、よく眠るために副交感神経を優位にする方法のうち、筆者が重要と思う要素を挙げさせていただきました。
この記事で挙げさせていただいた方法をヒントにしていただき、「あなた自身の快適睡眠メソッド」を確立していただければ、と思います。