定時で帰るなんて、あり得ない!
残業は当たり前だろ!
「定時で帰るのは、悪だ!」という考え方は、どの職場にもあります。
時計が定時を指した瞬間、ダッシュで帰る社員がいた場合・・
「定時で帰るなよ!」という声が、どこからともなく飛んできますよね。
そして日々の残業に疲れ、もう定時で帰ってやろうかな?と思ったとき・・
定時で帰るのは客観的に見て、本当に悪いのか?それとも別に悪くないのか?
ここは大事なところです。
定時でで帰ろうとして「定時で帰るのは悪だ!帰るなよ!」と言われたとき・・
もし本当に「悪くない」のなら、それを主張することはできます。
そしてもし「悪い」面があるのだとしたら、それも知っておくほうが動きやすくなります。
なのでこの記事では、定時で帰るのは悪いのか?悪くないのか?
悪いとして、その具体的な根拠はあるのか?
といったところを、いろいろな視点から徹底考察していきます。
目次
「労使間協定が無い」なら、無条件で悪くなくなる
まず最初に、ひとつ質問なのですが・・
あなたの会社では、「労使間協定(サブロク協定)」は結ばれているでしょうか?
もし、これが結ばれていなかった場合は・・
その時点で、定時で帰るのはまったく悪くないことになります。
なぜなら、そもそも残業させるには労使間協定が必須だからです。
社員に残業をさせるのは、それ自体は法律違反というわけではないです。
「労働基準法」に、残業をさせる根拠となる条文があるからですね。
下に表示してみます。
(ごちゃっとしますので、ざっと流しても大丈夫です)
労働基準法 第三十六条
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
e-Gov法令検索の「労働基準法」ページより抜粋、一部を強調表示
こんな感じですね。
そしてこの条文の、太字にしたところをまとめると・・
労働時間を延長する、もしくは休日に労働させるためには、使用者と労働者側との書面による協定が必要
ということになると思われます。
この協定というのが、俗にいう「36(サブロク)協定」です。
言葉を換えると、協定が「無い」場合は、残業もしくは休日労働をさせる根拠も無い、と言えるでしょう。
つまりその時点で、定時で帰るのは悪くない!ということになります。
残業そのものが労働基準法違反となりますので、当然ですよね。
もちろん現実には、理不尽なことも起きるものです。
「ウチは労使間協定が結ばれていないんで、残業は違法です」と至極真っ当な主張をしたとして・・
「うるせぇ!!黙って残業しろ!!」とばかりに、押し切られてしまうこともあるでしょう。
しかし定時で帰るのは「悪いか?悪くないか?」にテーマを絞って考えると・・
労使間協定が無い時点で、定時で帰るのは悪くないと確定することになります。
自分の会社で労使間協定が結ばれているか?は、意外と把握されていないことが多いようです。
かく言う私もサラリーマン時代は、まったく把握していませんでした。笑
しかし労使間協定の有無は、定時で帰るのは悪いのか?を考えるときの、第一のポイントです。
なので真っ先にチェックしておくべきと思います。
「契約やルールに無い残業」なら、帰っても悪くない
労使間協定をチェックしたところ、自分の会社では結ばれていた!
その場合は労働基準法にもとづいて、残業させるのは合法ということになります。
じゃあ・・残業を命じられた場合は、絶対にしなければいけないの?
協定がある場合は、定時で帰るのは絶対悪となるの?
となると、ここは違ってきます。
どんなときに、残業をしなければいけないか?
どんな仕事内容の残業をするべきなのか?
どのくらいの時間、残業をしなければいけないか?
こういったことは・・
- 労働契約
- 就業規則
- 労使間協定
これらの契約やルールにより、どう規定されているか?によって変わってきます。
労働契約は入社するときに、必ず結びますよね。
契約書に目を通し、印鑑を押しているはずです。
就業規則は、会社において給与や労働時間などを取り決めた、ルール一覧のようなもので・・
労働基準法
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。
e-Gov 労働基準法のページより一部を抜粋して引用
労働基準法にこうあるように、10人以上の労働者が居る会社では必ず作成されているはずです。
そして労使間協定は上でも解説したように、そもそも残業をさせるために必要な協定で・・
これがある場合は、これの詳しい内容が問題になってきます。
そしてどんなふうに残業をさせても良いか?は、これらの契約などに明記されているはずです。
なので「命令されたら、どんな残業でも必ずしなければならない」なんてことはもちろん無くて・・
これら契約やルールで決まっている通りに、残業をすればいいことになります。
どんなルールになっているか?は会社によって違ってくるので、一概に言えませんが・・
そもそもこれらのルールは、労働基準法といった「法律」の下位にあります。
なので「あらゆる条件の残業を、無制限にしなければならない」なんて条文はもちろん書けるものではありません。
通常は「残業を命じる業務上の必要性があること」などが条件に加えられているはずです。
そしてこれがあれば、例えば「本来は上司にやる道理があるけど、押し付けられた仕事」といった・・
明らかに業務上の必要性が無い仕事のために、残業する必要性は無くなってきますね。
という感じで、契約やルールに「無い」タイプの残業を無理やり押し付けられそうになった場合は・・
それを拒否して定時で帰るのは、ルール上は何も悪くない!ということになります。
逆に、言われたのがこれら契約やルールに「有る」タイプの残業で・・
そしてもちろん労使間協定も結ばれている場合は、その残業は「するべき」ということになります。
なのでこの場合には、それを無視して定時で帰るというのは「悪い」、ということになってしまいます。
という感じで、定時で帰るのは悪いのか?を考える場合は・・
これら契約などの内容は、チェック必須なのです。
なのでもし手元にあれば、労働契約書や就業規則のコピーを見てみてください。
恐らく何ページにもわたり、びっしりと文字が埋まっているのではと思います。
そしてこの場合は特に「残業」にかかわる部分は、隅々まで読んでおくことをおすすめします。
「法定時間以上」の残業をせずに帰るのは、悪くない
上記、契約やルールがどうなっていたとしても・・
「法定時間以上」の残業を命じられた場合、それをせずに帰るのは悪くないことになります。
残業をさせられる時間というのは・・
労働基準法 第三十六条
④ 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
e-Gov法令検索の「労働基準法」ページより抜粋、一部を強調表示
このように、労働基準法により「1ヶ月について45時間、および1年について360時間まで」と決められています。
なのでこの時間を越えて残業させるのは、法律違反となるわけですね。
加えて法律は、契約や社内ルールよりも「上」に位置するものです。
なのでたとえ就業規則に「無制限で残業させてもよい」みたいな、滅茶苦茶なルールが書かれていたとしても・・
法律に反している時点で、それは無効ということになってきます。
一応、特別条項付き労使間協定というものを結べば例外的・一時的に、この上限を越えることもできるのですが・・
それはあくまで繁忙期などの例外で、上限越え残業をさせるのは条件がさらに厳しくなってくるものです。
という感じで基本的には、どういった形で残業を命じられたとしても・・
「法定時間以上」の残業をせずに帰るのは、悪くない!ということになってきます。
「モラル」的に、定時で帰るのは悪いのか?
定時で帰るのは、何が悪いのか?
ここに対する「契約やルール上」の答えは、以上となります。
しかし、例えば「その残業、契約内容的に無効なので帰ります!」と颯爽と帰ろうとした場合・・
「契約がすべてなのか?モラルは無いのか!?とにかく残業してくれ!」
みたいな言葉が飛んできそうです。
そして法律や契約の上では、問題なかったとしても・・
「モラル的に」定時で帰るのが良くない状況だった場合は、帰るとまわりの反感を買ってしまいかねません。
そして、反感なんて知ったことじゃない!という態度で行くことも可能なのですが・・
その会社で今後しばらくは働いていこうと思うのであれば、無駄に周囲を刺激するのは避けたいところだと思います。
なので定時で帰るのは「モラル的に」何か悪いのか?
こっちの視点からも考えてみます。
定時で帰るのはモラル的に悪い!と言われる場合・・
その根拠となる主張は、
- サラリーマンの常識として、定時で帰るなよ!
- みんな残業してるんだから、定時で帰るなよ!
- 定時で帰るのは、ダメなやつだけだ!
みたいな感じになってくると思います。
サラリーマンの常識として、定時で帰るのは悪い?
サラリーマンなら、残業して当然だ!
こんな感じの「常識」はけっこう、いろいろな会社に蔓延しているものです。
そしてこれは、古い日本の価値観の影響が大きそうだ、と感じます。
つまりは、CMで「24時間戦えますか」なんて言葉が普通に流されてた時代の価値観ですね。
「月月火水木金金」なんていう、言葉や歌もあったようですね・・笑。
そういった時代の日本では、サラリーマンは残業して当然だ!という価値観があって・・
上司も部下も、それを当然として働いていたようです。
なのでそもそも「定時で帰る」という発想自体が、そうそう起きなかったのではないでしょうか。
そして現代でも、そういった価値観を持つ人はまだまだ居ます。
「昔の日本」と言ってもほんの数十年前の話なので、その時代を生きていた人はぜんぜん存命していますし・・
わりと若い人でも、そういった価値観を「引き継いで」育った人は居そうですね。
そして、そういった価値観に染まっていると・・
サラリーマンは残業して当然だ!定時で帰るのは悪だ!!
という感じの思想になるわけです。
しかし現代の価値観は、それとはだいぶ違ってきています。
社会情勢も法律も、残業は悪だ!といった価値観に傾いてきていますよね。
そして古い価値観というのは、「押し付けていい」ものではないはずです。
残業は悪だ!という価値観に従い「自分が」残業するのは自由ですが・・
それに基づいて「他人を」残業させる!というのは、道理が通っていませんよね。
なのでこういった視点から見ても、定時で帰るのは悪くない!となってくるでしょう。
みんな残業してるんだから、定時で帰るなよ!
会社のみんなが残業してるんだから、あなたも残業するべきだ!
みんなが残業を頑張ってるのに定時で帰るなんて、悪だ!
こういう考え方をする人も、けっこう居るのではと思います。
しかし社員が残業するか?しないか?は・・
社員ひとりひとり、その社員自身だけの問題です。
そもそも労働契約は「会社とその社員本人」との間だけに結ばれるもので・・
ひとりひとりの社員が会社と交渉し、残業するかどうかを結論づけているわけですよね。
そもそもいい大人がものを考えるとき、「他人がどうやってるか?」なんて何の基準にもなりません。
自分が残業する!とか、残業するしかない!とか思うなら、すればいいだけの話で・・
そこに他人が巻き込まれる道理は、どこにも無いはずです。
そうは言っても、みんなが残業しないと会社が回らないよ!みたいな理屈があるかもしれませんが・・
それは、そうしないと回らない状況を作っているマネジメント側の問題です。
会社の運営のしかたが「なっていない」からこそ、残業しないと回らない会社になっているわけですよね。
そして、それを自分が不条理な目に遭ってまで、尻拭いしなければならない!
なんて理屈はやっぱり、通らないのではと思います。
という感じで、みんなが残業しているんだから定時で帰ってはいけない!
これもやっぱり、筋が通らないと言えるでしょう。
定時で帰るのは、ダメなやつだけだ!
定時で帰るのは仕事ができない、ダメな奴だけだ!
なので「ダメな奴」認定されないためにも、残業しておくほうがいい!
こういった価値観も、けっこう定番だったりします。
そしてもちろん、仕事がぜんぜん終わってないのに定時で帰る!は基本的にNGです。
しかしやるべき仕事が終わらせることができるなら、定時で帰るのは悪くないものです。
定時で帰るのは仕事ができない人なのか?に関する詳しいところは、
上の記事で解説しているのですが・・
定時で帰れる人はもちろん、「デキる人」側であることも多いです。
デキるからこそ仕事が早く終わって、定時で帰れるわけですよね。
そしてその場合は「定時で帰るのはダメな奴!」なんてのは、まったくのデタラメということになってきます。
なので定時で帰るのはダメ!悪だ!
そういった主張も、まったく道理が通らないものになると思います。
定時で帰るのは何が悪いのか?まとめ
最後に、定時で帰るのは何が悪いのか?どんな場合に悪いのか?をまとめてみると・・
- 労使間協定が無い場合は、悪くない
- 法定時間外の残業をしないのは、悪くない
- モラル的にみても悪くない
- しかし「契約やルールで決まっている範囲内」「法定時間内」の残業をせず帰るのは、悪い
ということになってきます。
「定時帰宅と残業」はサラリーマンにとって、すごく重要なテーマです。
なので定時で帰るのは悪だ!残業しろ!とか言われた場合に備えて・・
日頃から考えたり知識武装したりしておくと、快適な仕事生活を送る助けになるかもしれません。
今回は定時で帰るのは何が悪いのかをテーマにお話ししました。